2021.07.11

CARS

前輪駆動ホットハッチの超武闘派! 新しくなったルノー・メガーヌR.S.の進化を、RSとRSトロフィーの2つのモデルで確かめた。

フェイスリフトで新しくなった前輪駆動ホットハッチの雄、メガーヌR.S.。先月報告した標準モデルのほかに、さらに過激な“トロフィー”の2台を連れ出し、彼らが得意とする箱根のワインディング路を、思う存分に駆け巡った。

メガーヌRSと世界最速のFFを競っていたシビック・タイプRは、最終モデルの受注を開始するや瞬時に売り切れてしまったという。スポーツ・モデルの人気、根強いです。一方、ライバルのメガーヌRSといえば、マイナーチェンジを行っている。もちろん受注を開始したばかりなので、まだまだ購入可能。文頭に紹介した通り絶対的なパフォーマンスで言えばシビック・タイプRといい勝負。価格もほとんど同じ。シビック・タイプRが現時点で買えたとしても、メガーヌRSの魅力は大きいと思う。



熱いクルマ

まずクルマの紹介をしてみたい。今回試乗したのは2タイプ。“メガーヌRS”と“メガーヌRSトロフィー”である。フランス車好きなら御存知の通り“RS”って“ルノー・スポール”の略。「スポール」はスポーツのフランス語です。トヨタなら“GR”。日産だと“NISMO”。メルセデスであれば“AMG”をイメージしていただければよい。ルノーのモータースポーツ部門を統括しており、F1もルノー・スポールの担当(ルノー本体が赤字だったため今年からアルピーヌという別組織に変えました)。

日本でこそイメージが薄いものの、ラリーやレース用のベースモデル開発&販売などを業務のメインとしており、直近だとメガーヌより一回りコンパクトな“クリオ”をベースとした競技車両が大人気になってます。そもそも先代メガーヌRSだってラリーに出場するグループNのホモロゲ・モデルとして作られたものだったりする。といったことからすれば、ルノーRSの高性能モデルはポルシェ911GT2のようにバリバリの武闘派なのだった。シビック・タイプRに勝るとも劣らない熱いクルマと言って良い。

トロフィーのインパネ。シフトおよびペダルまわり以外は基本的に標準のR.S.も同じ意匠になる。従来型と比べるとメーターとインパネの中央にある液晶パネルの解像度が上がり、より鮮やかで凝った意匠の表示ができるようになった。

911GT2のような武闘派

前置きはこのあたりにして試乗と行きましょう! トロフィーから試す。ドアを開けレカロのセミ・バケットシートに座ると「おお! 硬いですね!」。シートそのものは快適なのだけれど、車体がほとんど沈み込まない。競技車両に座った時と同じ感覚です。クラッチ踏んでスタート・ボタンを押すと「おいおい。いいのかね!」と思えるファスト・アイドル機能による大きめの音に包み込まれる。もちろん車検適合。ファスト・アイドルが終わった時点で騒音チェックすると適合範囲に収まるそうな。エンジン掛けただけで盛り上がる!

シートをはじめ、室内のつくりは基本的に従来型から変更はない。後席は標準のR.S.、トロフィーともに同じものを用いているが、前席は、標準のR.S.がシート・ヒーター付きのスポーツシートになるのに対し、トロフィーはレカロ製のセミ・バケットシートを装着する。表皮はいずれもアルカンターラ。一体感という意味ではトロフィーのバケット・タイプに軍配が上がるものの、標準のスポーツシートが持つホールド性の高さもなかなかのもの。厚いクッションのおかげで快適性はスポーツシートが勝っているのは言うまでもない。





クラッチミートしてスタートすると、やはり武闘派。なかなかの手応え。脚まわりとエンジン、どちらから紹介しようか迷うが、おそらく最初に感じるのはパワーだと思う。300馬力/400Nmという必要にして十分以上のスペックをキッチリ感じる。1速でアクセル踏むと、瞬時にレッドゾーン。2速ですらブリッピングしてるんじゃないかというイキオイで(少し誇張)レッドゾーンを目指す。アクセル全開すれば3速だって3秒は持たない、と思う。日本の公道だと3速がレッドゾーンに入るまで使えないですから。

今回のフェイスリフトで標準のR.S.もトロフィーと同じ300ps仕様が積まれるようになった。

排気量が1800ccということからピーキーなエンジン特性をイメージするかもしれないけれど、このあたりはラリー車づくりのノウハウだろう。コストを掛けたセラミック/ボールベアリングが良い仕事をしている。アクセル・レスポンスは全く不満なし。ちなみに競技車両になるとアンチラグ機能が付く。コーナーのクリッピング手前から左足でブレーキ踏みながらアクセル全開してやれば、タイムラグ無く400Nmという強烈なトルクが前輪に伝わるという寸法。さすがF1のパワー・ユニットを作っているメーカーだと感心しきり。

メーター表示は走行モードによって3種類用意される。右から「セーブ」「スポーツ」「レース」。とくにレース・モードのデザインがガラリと変わった。





続いて脚まわり。トロフィーのサスペンションは「超」を付けたくなるくらいの武闘派だ。サーキットのように良好な路面をイメージしているんだと思う。世界水準からすると滑らかな日本の道ですら揺すられるほど。といっても単に動かないだけの安い脚まわりとは違う。ポルシェ911GT2と同じく、サーキット走行でちょうど良いくらいのバネとダンパーを使っているんだと思う。正統派の「硬い!」です。絶対的なコーナリング・スピードは「使い切れないほど高い」と表現しておく。実際、公道だと限界に辿り着けない。

トロフィーのブレーキはアルミ製ハブを用いた軽量仕様で、鋳鉄製のローターにはスリットが入る。キャリパーはどちらもブレンボ製4ポットだが、色が異なる。



フロント・ブレーキはブレンボの対向4ポット・タイプ。低速領域で曲がりやすく、高速領域になるとスタビリティを確保するため稼働する4WSやトルセンLSDも良い仕事をしている。参考までに書いておくと、続いて試乗した標準のRSのフロント・ブレーキはシルバー塗装の同じブレンボ。トルセンLSDの代わりにブレーキを用いた電子制御デフになります。サーキットで限界まで攻めれば違いが出てくるだろうけれど、一般道だと「いずれにしろ使い切れませんね」。違いが解るほどペースアップしたら免許証無くなります。



一般道なら断然、標準のRS

続いて標準のRS。今まで279馬力と若干スペック的に低かったが今回の変更でエンジンを大幅にグレード・アップ。試乗車はトロフィーと同じセラミック/ボールベアリング・ターボになり、最高出力を300馬力に向上。最大トルクは420Nmとマニュアル・ミッションのトロフィーを上回る。この出力になると良いトルコンATが見当たらない、ということから6段の湿式ツインクラッチとの組み合わせです。走り出すとツインクラッチの自動MT、クラッチミートも変速も滑らか。これなら街乗りだって快適だ。

シフトまわりはセレクトレバーが異なるほか、サイドブレーキはEDC(デュアルクラッチ式自動6段MT)が電動式になるのに対し、6段MTは手動式が採用されている。

それでいてアクセル全開のままシフトアップしていけば、ツインクラッチ特有の「ボワッ!」というリタード(変速のタイミングで点火時期を遅らせる)の音と共に気持ち良く加速していく。6段マニュアルほどのダイレクト感こそないが、十分スポーティ。使い切れないパワーだし。しかもマイナーチェンジ前より明らかにパフォーマンスが上がっており、レスポンスだって良い。個人的には6段マニュアル派ながら、ヨメさんなども乗ることを考えたらツインクラッチでもいいかな、と日和ってしまいそう。



さらに「こっちの方がいいね!」はサスペンション。トロフィーのダンパー、ストロークしてない感じ。標準モデルの脚まわりなら一般道でも路面をキッチリ追いかけてくれる。サーキットを走るんじゃなければ私は標準モデルに軍配を上げておく。前述の通りブレーキが少しグレードダウンするしLSDも付いてないという点を考慮したって全く不満なし。そうそう。シートはセミバケからスポーティ・タイプになるものの、これまたレカロと大差ないホールド性を確保している。快適性まで含めた総合評価だと、標準モデルのスポーツシートの勝ちです。



書き遅れたが、安全&快適装備はトロフィーも標準モデルも同じ。歩行者まで対応している自動ブレーキの他、車線逸脱警報、アダプティブ・クルーズコントロール(6段マニュアルは当然ながら停止制御はない)まで全モデルに装備されている。クルマに乗っていて一番ヘコむのが事故。スポーツ・モデルの多くは自動ブレーキなど付いていない。メガーヌなら安心して毎日の相棒としてお付き合い出来るだろう。価格は標準モデルでシビック・タイプRよりリーズナブルな464万円。レカロ付きのトロフィーでも494万円。武闘派を雇うコストとしちゃ手頃です。

文=国沢光宏 写真=望月浩彦

■ルノー・メガーヌR.S.(トロフィー MT)
駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動
全長×全幅×全高 4410×1875×1465mm
ホイールベース 2670mm
トレッド 前/後 1620/1600mm
車検証記載車両重量 1480kg(1460kg)
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V直噴ターボ
総排気量 1798cc
ボア×ストローク 79.7×90.1mm
最高出力 300ps/6000rpm
最大トルク 420Nm/3200rpm(400Nm/3200rpm)
変速機 デュアルクラッチ式6段MT(6段MT)
サスペンション形式 前/後 ストラット式/トーションビーム式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 245/35R19 93Y
車両価格(税込) 464万円(494万円)

(ENGINE2021年7月号)

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