2022.02.19

CARS

「半端なクラッシュだけはするな」26歳の誕生日プレゼントにとポルシェを貸した故徳大寺有恒氏の言葉がカッコいい 自動車ジャーナリスト、大井貴之の「俺の911ターボ物語」


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そんな大切なパートナーだったにもかかわらず、オレは911ターボに酷い仕打ちをしてしまった。1997年、9年間在籍した会社を退社し独立。市街地走行の燃費が極端に悪く、整備にもコストが掛かる911ターボを走らせる機会はどんどん減っていった。エンジンを掛けるのは10日に1度だったのが、しだいに月に1度になり、バッテリーが上がるようになると、さらにその間隔は長くなった。2010年頃には不動車と化す。ところが2012年、旧知のあるレース・メカニックがガレージの引越費用を稼ぎたいので、911ターボの復活作業をさせて欲しいと申し出てきた。困った時はお互い様、と彼に託したのが間違いだった。

作業は難航しながらも着々と進んでいる……という報告と共に請求書がやって来る。しかし2週間で終わる約束が5カ月経っても連絡が来ない。どうせどこかのガレージの隅で放置されているんだろうと思っていたのが甘かった。ある日、信頼するポルシェ・ドクター、MY&Cの三上英樹社長から耳を疑う連絡が入った。

「大井さんの911ターボらしきクルマが、知り合いの板金屋の外に放置されているんだけど……」



それはもう想像を絶する悲惨な状態だったという。そもそも放置していたのだから塗装は仕方ないが、エンジンはエア・クリーナー・ボックスなどが外された状態で、何のカバーもされずに露天に放置されたため内部まで錆びだらけに。しかも作業中に火災まで起こしたらしく、エンジンには粉末の消火剤が撒かれたままだった。信用したオレが悪かった。



そのまま手放すことも提案されたが、それではバチが当たると三上社長に修復を依頼。911を知り尽くした神の手によって、見事に復活した。一体いくら掛かったのかって? ウチの奥さんが読む可能性のあるこの本では、絶対に書けません。

10年近いブランクはあるものの、この6月でオレと911ターボとの付き合いは満25年になった。現在は慣らし運転のまっただ中だ。全塗装した外観は出会った頃のような美しさだが、まだまだ細部の修理や整備は必要な状態だ。けれど、ここからはゆっくりやっていくことにしよう。今後の経過については随時エンジンの長期リポートのページで報告できないだろうか。村上編集長、ぜひお願いしたい。

梅雨のはじまる前に、911ターボで新緑の裏磐梯あたりを走りたいところだが、さすがに遠出ができる状態ではない。けれど、音も、ガチッとしてしなやかな乗り味も、あの頃のままだ。長い長い反省文になってしまったけれど、1つだけ、間違いなく言えることがある。ポルシェじゃなきゃ、こうはいかない。

文=大井貴之 写真=阿部昌也 協力=MY&C

【後編を読む】
土に返る寸前に救出されたポルシェ911ターボ、完全復活なるか!? 自動車ジャーナリスト、大井貴之の「続・俺の930ターボ物語」

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(ENGINE2017年7月号)

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