2020.03.20

CARS

『カーグラフィック』は僕たちの先生だった! 英国車好きは小林彰太郎さんの影響というオーナーのカーライフとは

ロードカーとレーシング、2台のジャガーEタイプがガレージに並ぶ。

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なかでも特に思いがこもっているのが、1989年以来ガレージに納まり続けているロータス・エランS2と、1933年型のMG・Lタイプ・マグナである。

この両車に共通しているのは、新谷さんの理想に合わせて、独自のモディファイが施されていることだ。まず歴代2台目の趣味グルマとなったエランは、当時販売されていた26Rのボディキットを装着したもので、現在販売されているものよりも26R・S2のフォルムを忠実に再現しているのが特徴だ。

しかしながら26Rレプリカにするのではなく、ヘッドライトをアルピーヌA110用に変更。合わせてヘッドライト・カバーもA110用を加工して付けるとともに、カバーに合わせてフェンダーの“峰”にあるラインを変更するなど、ボディの内外からシャシー・フレーム、パワートレインまで、あらゆるところに手が加えられているのだ。





そしてMG・Lタイプ・マグナの方も元々のクーペ・ボディを降ろし、精悍な2シーターのオープン・ボディへと載せ替えられている。「自分の中でこういうモノに仕上げたいと考え、アウトラインを引いてね。MGのオーソリティと相談しながら、彼の手を借りて、2年くらいかけて完成しました」

ボディは当時のレース・マシンであるK3マグネットのレプリカにするのではなく、何度も調整したというボート・テールや、トレッドを広げるためにワンオフで作ったセンターレイスのホイールなど新谷さんのイメージを具現化したデザインと、マイナス・ネジやハンドメイドのボンネット・ルーバーなど当時の雰囲気、流儀に沿ったディテールが絶妙にバランスしたセンスの良いものに仕上げられている。

加えてインテリアは、新谷さん自ら型紙を作ってメーターの配置をアレンジしたほか、シート表皮に牛革ではなく衣料用の馬革を使用することで、滑らかな手触りに加えて、早くエイジングできるなど、様々な工夫が盛り込まれていた。

一方1086ccの直6エンジンは鍛造のコンロッドやクランク、コスワース製のピストンを組み込んだ上にスーパーチャージャーを装着。ベンチテストでは4800rpmで70hpを発生(ピーク・パワーはそれ以上)するまでにチューンナップされているそうだ。

既にお気づきかもしれないが、ガレージに納まるコレクションはすべて英国車ばかり。その理由を新谷さんは「英国車好きはおそらく小林彰太郎さんの影響ですね。中学生の時に初めて買って以来、『カーグラフィック』は僕たちの先生だったからね」と分析する。実際、これまで英国車以外で手に入れたのはシボレー・コルベット・スティングレイ(C2)とシトロエンDS21のみで、今では2台とも数少ない“手放したクルマ”リストに入っている。

そんな新谷さんの元にやってきた一番新しいコレクションが、1957年式のオースティンA35だ。実はこのクルマは、2016年のグッドウッド・リバイバル・ミーティングでオースティンA30/35の生誕60周年を記念して行われたワンメイク・レース、“セント・メアリーズ・トロフィー”でポール・ラディシッチがドライブした個体そのもの。



2017年にグッドウッド・リバイバルを訪れた際に売り出されているのを見つけ、ひと目惚れしたものだという。「最初に見て欲しいと思って、忘れられずに次の日も見に行ったら、僕の所有しているアストン・マーティン・インターナショナルを扱っていたお店の売り物だったんです。“なんだ欲しいのか?”となって“じゃあ買う”と話は早かったですね」

そこで最後に気になるのは、奥様をはじめとするご家族の反応だ。「おかげさまで文句は言っても理解はあります。向こうでA35を見た時も“この色かわいいね、で、買うの?”でしたから(笑)」

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文=藤原よしお 写真=望月浩彦

(ENGINE2020年3月号)

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